五感で楽しむ住まい

現代のらしは、ストレス環境にさらされることが多く、五を識しないまま日々を過ごしていることが多いのではないでしょうか。江戸や昭和の住まいに遡ってみると、部屋の温度調整ひとつをとっても、「和紙で作った障子や襖で寒気から部屋を守る」「庇(ひさし)で光を遮る」など自然からの恩恵をうまく利用して、快適空間をつくり出していました。また、寒いときには「火鉢から燃え上がる赤い火を眺めたり・パチパチとする音で温かさを感じる」、暑いときには「水のせせらぎを眺めたり・風鈴の音に耳を傾けて涼を感じる」など、五感を刺激しながらその季節のうつろいの良さを味わっていました。五感をじっくりと楽しむことで、生活をもっと楽しみ充実させることができます。さぁどんな工夫があるか一緒に考えてみましょう。


「視る・聴く・嗅ぐ・触る・味わう」五感で楽しむ住まい

近年、都会に暮らす家族が、森の中や海のそばにセカンドハウスを建てて、週末を楽しんでいるケースが多くみられます。ヨーロッパでは、このようなライフスタイルが昔から取り込まれていました。パリやローマのようにコンクリートで囲まれた暮らしを離れて、週末や夏休みは、田舎暮らしを楽しんで五感を存分に働かせるのです。なぜ彼らはそれほどまでに自然にこだわるのでしょう。ほとんどは「人間としての幸福を感じられるから」という答えが返ってくるのです。「自然のうつろいの美しさや、鳥の声、森や緑の香り、美味しい空気に触れる」という、本来人間にとって大切な触れ合いができるから。ヨーロッパ人にとっては、常に五感を豊かに刺激し続けることが大変価値のあることであり、別荘で得られるような自然の風景や音、香り等は、五感に最も響く最高の芸術として大切に思われているだのとか。視覚でも味覚でも嗅覚でも意識的に磨うとしなければ衰えていくといわれています。美味しいものを食べなければ本物の味がわからなくなってしまいますし、よい音を聞かなければ音のセンスも養われません。味覚や音感、嗅覚などは子供の頃に形成されるという説もありますが、大人になってからでも十分磨くことはできます。いまの暮らしに「五感をくすぐる」少しの工夫をプラスするだけで、ずいぶんと生活が楽しめることになるのです。庭の木にブランコを作る。庭が小さくても縁側をつくる。窓辺にグリーンを置くなど、日常に楽しみをプラスしてみませんか。


視覚と光の関係について

部屋の床や壁というものは、特に意識して見る場所ではありませんが、背景として視界に入ってくることを想定して選んだほうがよいでしょう。視覚というのはその環境に大きく影響されるからです。また床にあたる光の反射を、目は絶えず受け取っているため日常的な生活の中では「眩しさ」を少なくする配慮が大切。たとえばフローリングや壁、天井など、面積を多くとるスペースに、木や土、紙などの自然素材を採用するだけで、眩しさを軽減します。それらの素材は表面が均一ではないため、強い反射を生みません。反射する光が目へ与える負担が少なくなると、目はストレスを感じにくくなるのです。


視覚を生かしたフォーカルポイントを

部屋のなかで、視線を集める場所を「フォーカルポイント」といいます。インテリア空間を素敵に見せるコツは、「フォーカルポイント」を部屋のどこかに作ること。見つけ方は意外に簡単です。部屋の入口から入って正面、または一番に視線が入ったところの壁面を「フォーカルポイント」とするのがおすすめです。そこに飾り棚やテーブル、ソファなどを配置し、その上に鏡や絵、ランプなどを置くと空間がまとまります。さらに草花やキャンドルを飾ると、くつろいだ雰囲気を演出することができるでしょう。和室の場合は「床の間」にあたり、掛け軸や生け花を置くと落ち着きが生まれます。欧米の洋室では、「暖炉」や「ニッチ(壁の凹み)」を中心に演出することで、安定感を出すといわれてきました。その次に気を付けることは、視覚表現の基本である”色彩”です。春なら桜、夏なら青空、とインテリアに季節の要素を取り入れ、色で表現してみましょう。

★絵を飾る時:立っている時のフォーカルポイントは、大人の場合なら150cm前後、座っている時はやや低めの120cm前後といわれています。


五感を研ぎ澄ますための家づくり

五感を研ぎ澄ますには、必ずしも、自然に囲まれていないといけないという必要性はありません。しかし土地がせまい日本では、「住宅に囲まれている」「アスファルトが多い」など、なかなか深呼吸できる環境でない家が多いのも否めません。そこで今回提案したいのは、「天窓のある暮らし」です。空に少しでも近づける、明るい生活で、もっと感受性を豊かにしてみませんか?


天窓から空を眺める暮らし

「お隣の家に隣接していて窓が開けづらい」「北側で部屋が暗い」など、それぞれの悩みを解消するのが天窓の存在です。屋根に近いスペースを使って、上から光をたっぷり取り入れられるだけでなく、風の行き場を増やすことによって換気もスムーズになり、風通しの良い空間が生まれます。
天窓をつくると、壁面のみの窓に比べて、部屋の明るさは2倍~3倍にもアップ。上からの光を存分に取り込めるから、暗かった部屋にも、空間の広い範囲に、光を行き渡らせることができます。また空を眺めることができるのでリラックス度も上がります。
そして、採光がじゅうぶんにできるメリットだけではなく、通常の窓だけに比べて約4倍も通気量が確保できるという魅力があります。壁面の窓と段差ができるため、無風の時にも風の力差が生まれ、空気の入れ替えが可能になります。つまり電気なしで換気ができ、常に新鮮な空気を循環させることができるのです。

通気性も節電効果もアップ


聴覚が磨かれる見えないインテリア

少しでも心地良く過ごすために、音楽や映像が楽しめる空間づくりをしてみませんか。自分が好きな音楽を流すだけで、自然に聴覚を刺激し、緊張度を緩めてリラックスできます。しかし、窓などから音が漏れないか、ご近所にご迷惑じゃないかと心配される方は、音を吸収しやすい布製のものをインテリアに加えてみるといいでしょう。窓には布製のカーテンを、床にはカーペットやラグを敷き、クッションも布製にすると効果的です。また、吸音性があるを利用して、音を伝えたくない方向の壁際に棚を置くという方法もあります。音を心地よく聞くには、音の反射と吸音のバランスがとれた環境が大切です。音のこだりには様々なアイデアがありますが、最近は天井に埋め込むタイプのスピーカーも人気です。上からの臨場感でサラウンドな音質が広がるのはもちろん、お店のBGMのようにさりげなく音楽を流すこともできます。スペースを取らないのが嬉しいですね。


自然素材で五感につなぐおもてなし

手ざわりや質感は、「触れる」という五感をくすぐり、「心地良さ」とつながる大事なインテリアポイントです。特に、和紙や皮、石、木といった自然素材に触れると、心がやすらぐものです。そのリラックス効果を生かして、インテリアやテーブルコーディネートの中に天然素材を取り入れてみませんか。テーブルクロスやコースター、器などに木や竹、麻といった自然のマテリアルを使ったり。また、旅先で拾ってきた貝殻やハーブ、形のいい石、松ぼっくりなどを部屋に飾る、といったアイデアも素敵です。「どこで拾ったの?」とコミュニケーションのきっかけにもつながり、もてなす人の温かさがゲストに伝わります。


嗅覚をくすぐる香りのインテリア

最近、お洗濯関連の「アロマ系」商品が注目されています。乾燥機に入れる“香りシート”はずっと香りが残るので、これを使って折り紙のようなオブジェを作りましょう。正方形に切り、紙風船を折って、籐かごに入れるだけで立派なインテリアに。アロマの力は、精神や身体、美容にもたらす効能があるといいます。クローゼットやたんすの中に入れておくだけでも、「嗅覚を刺激」してくれる、こんな五感グッズを作ってみてはいかが。


味覚を大切にした日々の暮らし

五感の中で一日三度は使われているのが「味覚」です。つまり料理は毎日の生活の中でとても大切なこと。家族の味覚に訴えるおもてなし料理を作るヒントは、「赤」「緑」「黄」「白」「黒」の5色で料理をカラーコーディネートすることです。この5色は、健康効果や美容効果が期待される栄養素をバランスよくとれるといわれています。例えば、トマトとバジルとモッツァレラチーズに、黄色いオリーブオイルを。味覚にも視覚にも語りかけてくれる、この5色使いを意識して、ちょとした盛りつけを工夫してみましょう。

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