子育てを楽しむ住まいの工夫

19世紀を代表する児童文学「ピーターパン」「赤毛のアン」「小公女」などの子供たちが、その小説の中で決まって過ごしていた空間があります。それは“屋根裏部屋”。その当時のヨーロッパの中流階層以上の家庭では、「家の外で働く大人たちにとって、住居こそが安らぎと休息の場」であるとされていました。そのため主として両親たちが書斎や客間、寝室などを占め、余っている屋根裏部屋が子供たちの居湯所としてあてがわれたのです。そして親の生活に首を突っ込ませないために、男の子には“スズの兵隊”を、女の子には“ドールハウス”が与えられました。その後、欧米で「子供が自立するための専用部屋」が与えられ、現在の日本でもすでに子供のプライバシーが守られすぎるほどの環境になりました。そんな中いかに親子の距離が縮まり、つながりが深くなるのかを考えてみましょう。


ベビー期には両親が動きやすいインテリアに

まだ赤ちゃんが自ら動けない乳時期においては、子供部屋づくりも計画性をもたせたいもの。子供部屋といえども、子供が主役というよりは、いかに両親が「世話をしやすい環境」をつくることが大切です。たとえばベビーベッドのそばに、お母さんが授乳しやすいソファを置いたり、添い寝やおむつ替えがのびのびとできるようフロアにも余裕をもたせておくと便利な動線になります。さらに、万が一ベッドから赤ちゃんが抜け出してしまった際にも安心なように、フロアにはクッション性のあるカーペット等を敷いておくことも必要ですね。また、夜泣きされてもストレスを感じないために、オーディオやTV、アロマテラピーなどを取り入れると、面倒をみながらもリラックスできます。赤ちゃんがイライラした時には、アルファ波が流れる音楽を聴かせると、落ち着いてくれるという説があります。クラシックや子守唄など、ゆっくりとした音楽を用意しておいて、大人も共にリラックスできる環境を作るようにしましょう。


寝かしつけタイムを親子で楽しくするには

昔から「寝る子は育つ」ということわざが言い伝えられているように、幼児期には十分な睡眠がとれる環境を与えてあげるのが両親のつとめといえるでしょう。ちなみに、一般に幼児期に必要な睡眠時間は11時間〜12時間くらい、学童期に入ると、8時間〜10時間くらいと言われています。深夜0時までの「脳の睡眠」が行われる時間帯に成長ホルモンが多く分泌され、また0時以降の「身体の睡眠」が行われる時間帯も大切なので、子供時代においてはできれば夜8時から朝6時の間に睡眠をとるのが良いとされています。しかしなかなか寝つけない場合や、お昼寝をしすぎて夜眠れないということもありますので、右上イラストのような、「お部屋に星空が再現できる」ライトや、ハンモックなどで親子でゆっくりとした時を楽しみたいですね。


子育てを楽しむ住まいの工夫

大人だけが住むインテリアとは、明らかに違ってくる子育てのためのインテリア。「こうあらねばならない」というよりは「こんな風に工夫すれば、もっと気持ちよく暮らせる」との想いで計画していきたいものです。たとえば、家族がいちばん居る時間が長くなる“リビングルーム”では、子供たちにも安全でかつ大人もストレスのない空間にしたいもの。遊ぶことが仕事といっても過言ではない子供たちにとって、玩具は宝物です。遊びたい時にさっと取り出せる低い位置にあること、そして自分で片付けることができるようにしてあげると、整理整頓の習慣も身につきます。収納がフロアに近いこと、そして小物類をむきだしに見せないかたちの収納ボックスをおく。そしてそれがアイテムの種類ごとにプレートで分類されているなど、「片付けしやすさ」にもちょっとした工夫を凝らしたいものです。


子供部屋の収納はベッド周りを効率的に

自分のプライベートが守られる“子供部屋”は、いつどのタイミングで与えるかは家庭によってそれぞれです。幼少期まではリビングなどで両親と過ごすことが多いので、それほど必要性がないかもしれませんが、就学を迎えるとデスクスペースを確保しなければならない上に、ベッドや習い事の道具などが増えるので、やはり専用の部屋を設けることになり、さらには家具やモノで占拠されてくるのは必至。限りある子供部屋を有効的に使うためにも、ロフトベッドを取り入れてみてはいかがでしょうか。設計の段階から要望すれば壁に据え付けられ、とても頑丈な作りのロフトベッドが完成します。また近年では市販のものでも良質なものがありますので、就学してから置くのもいいですね。下にデスクが置けるだけでなく、壁面にボードを置けば、スペースを有効的に活用できます。はしごを登るのは子供心をくすぐり、自分だけの居場所として「寝る」「くつろぐ」が楽しみになりそう。


ロフトへの道のりも無駄なく活用

3階建てでなくとも、屋根の形状を利用した「ロフトのある家」を楽しむ家族が増えています。2階の天井スペースを有効利用したロフトは、お子様の基地的な居場所になるだけでなく、ベッドを置けば立派な子供部屋に変身。小さい頃は“隠れ家”のように使用し、成長して大きくなれば、趣味の小部屋や収納スペースとしても活用できるので、ムダがありません。左下のイラスト は、ロフトを利用してさらに機能をアップさせたデザインです。ロフトヘ上がる階段をつくり、その階段には引き出しや収納棚を設置。少しのスペースでもムダにせず、収納に使うという、エコなアイデアです。子供たちは、楽しみながら、衣類や小物を片付けることができ、整理整頓が自然と身につくことでしょう。ロフトの真下もスペースを取れるので家族が集まれる場所です。


“お片づけ習慣”がつくデスク整理

就学児になると、文房具やノートなど、使うアイテムが多種類になってきて、デスクの上には小物が散らかりがちです。特にペン一つをとっても様々に種類があるので、ペン立て数個では整理できないしデスクのスペースを占拠してしまうのが現実。そこで、壁面のスペースいっぱいを使って、こまかいものの収納に活用させてみてはいかがでしょう。まずは、デスク正面の壁面に、マグネットボードかコルクボードを取り付けます。デスクの幅と同じ大きさにすれば、統一感が出ます。左右にブックスタンドや収納棚を置き、その間につっぱり棒を取り付け、S字フックでペンホルダーを何個も並べていきます。ペンや鉛筆、小物などと分類ができ、デスクの目の前にあるのでさっと取り出せ、引き出しに入れておくよりも格段に時間が短縮できます。タイルやマグネット素材など表面がつるっとしたボードであれば、タオルハンガーなど吸着盤のついたバーなども利用できます。一方で、コルクであれば大切なプリントなどをピンで刺しておけるのでそれも便利ですね。

 

学習やクラフトがすすむシェアデスクを作ろう

個々の子供部屋も良いですが、ドアの向こうで子供たちが何をしているか、どんな勉強をしているかがまったく分からないというのも不安なものです。また、子供たちにとっても、大人の協力を得ないといけない状況もあるかと思います。そこで提案したいのが、リビングの一角にシェアデスクを設けること。ここでは、日頃の宿題を見てあげられるデスクであることが基本です。さらに、絵を描いたり、クラフトをしたり、また裁縫やDIYの趣味、お菓子づくりなども親子で一緒にできる、いわゆるワークデスクとして活用させます。デスクの引き出しや収納には、みんなが使える文房具はもちろん、画用紙や折り紙などのアートグッズ、ドライバーなどの工具まで、家族みんなが取り出せるようにしておけば、誰がどんなものを作ることになっても、力を合わせながら完成させられます。書斎やロフトなどにもこんなワークデスクがあれば嬉しいですね。


赤ちゃんから高齢者まで。年齢に合わせて成長していけるユニバーサルデザインの家具を。

子育てを経験した方も、子育て真っ最中の方も、「子供の成長はあっという間」と口を揃えるのが常のようです。幼少期にせっかく良い椅子を購入しても、すぐに使えなくなるようでは、もったいない限りです。そこで提案したいのが、成長に合わせていろんな形に変化させられ、あらゆる世代に使えるユニバーサルデザインの椅子です。幼少期の頃は上図のようなハイチェアとして、横に倒せば木馬としても遊べます。シートベルトを外せば、大人から高齢者までが活用できる椅子になるという画期的なデザイン。一台何役もこなすので3世代で暮らす家族にも重宝します。


幼い頃は子供部屋をなくしてコミュニケーション

乳幼児はもちろん就学前までの子供たちは何かと目が離せないもの。いつかは「自立するためにもそれぞれの部屋を…」との計画はそのまま持ち続け、それまでのかけがえのない時期を、思う存分一緒に過ごしたいものです。リビングルームは「家族みんなが過ごす場所」との認識をもって、いつでもみんながコミュニケーションを取れるような“ボーダーレス”な空間にしておきたいものです。たとえばいつものソファに、モビールをぶら下げるだけで子供にとっても楽しい場所になりますし、コートハンガーなどは子供の高さでも何かを掛けられるようにするなど、尊重してあげると生活習慣が身に付きます。またダイニングルームのテーブル以外に、床に近い目線で小さなテーブルや椅子を置いてあげ、そこで会話や遊びができるよう心がけると、絆が深まるはず。工夫のあるインテリアによって培われた親子関係は良好になることでしょう。

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